開業医が診る間質性膀胱炎 要旨
2025.10.4 泌尿器科エキスパートセミナー
間質性膀胱炎:
我々の世代では、
よく分からないけど、膀胱を痛がっている人達
水圧拡張すると五月雨状の出血や点状出血が起こる・・治る
ハンナ病変って何・・?
という感じでしたが、・・・・・・昔のことは忘れましょう
全く異なる病気の集団を、同じ病気として一緒にして、診療、臨床試験をやってきたので、ポジティブな結果は出ないのが当たり前でした。
尿をためると不快で早く出したい人・・・・CSしましょう。
概要・定義
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群(IC/BPS)は、「膀胱に関連する慢性の骨盤部の疼痛、圧迫感または不快感があり、尿意亢進や頻尿などの下部尿路症状を伴い、混同しうる疾患がない状態」と定義される症候群です。
病型分類(膀胱鏡検査でのハンナ病変の有無による)
◆間質性膀胱炎(ハンナ型、HIC)
- 特徴: 膀胱粘膜に特徴的な発赤病変(ハンナ病変)を認める
- 病態: 慢性免疫性炎症疾患・自己免疫疾患
- ハンナ病変: 境界が比較的明瞭で平坦な発赤病変、NBIで褐色病変。識別がより鮮明
◆膀胱痛症候群(BPS)
- 特徴: ハンナ病変を認めないもの
- 病態: 非炎症性疾患、神経内分泌的疾患・機能性身体症候群
- 多様性: 多彩な疾患の集合体でありPhenotypingが不可欠
疫学・臨床特徴
- 2015年調査:本邦で約4,500人(人口比0.004%、HICは約2,000人)稀少疾患と考えられていたが、最新調査:20代以上国民の約2.5%(約300万人)が週1回程度の膀胱痛を自覚。案外、ありふれた疾患の可能性。
- 女性優位: 全体の約70~80%が女性
合併症の特徴
- HIC: 関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患
- BPS: 過敏性腸症候群、抑うつ、偏頭痛、線維筋痛症など
症状の特徴
- 共通症状: 膀胱・下腹部痛、尿道痛、外陰部痛、昼間・夜間頻尿、尿意切迫、膀胱不快感
- HIC: 針を刺すような鋭敏な痛み、1回排尿量100mL以下の頻尿
- BPS: 鈍痛や不快感・違和感、膀胱容量は比較的保たれる
病態生理学的基盤
HIC(間質性膀胱炎ハンナ型)
- 膀胱上皮の剥離と粘膜下の炎症が顕著・・ハンナ病変以外の膀胱全体にも炎症がある。
- 炎症・免疫反応関連分子の遺伝子発現が亢進
- B細胞異常と浸潤B細胞のクローナル増殖
秋山先生らの研究で、B細胞クローン拡大にAPRIL(a proliferation-inducing ligand)とBAFF(B-cell activating factor)という分子が関与していることが明らかに。
これらは、B細胞の成熟、生存、増殖、分化に関わっており、既に全身性エリテマトーデス等の自己免疫疾患において治療標的となっている。この発見は、ハンナ型間質性膀胱炎の免疫病態の核心を突くものであり、新規治療法開発への道筋を示している。
日本人患者144人を対象としたGWASにより、MHC領域内の遺伝子多型rs1794275が同定された。
特に注目すべきは、HLA-DQB1遺伝子の71、74、75番目のアミノ酸配列の変化である。これらのアミノ酸は抗原提示細胞がリンパ球に抗原を提示する際に機能するMHCクラスⅡ分子において、抗原ペプチドが結合する結合溝に位置している。この発見は、抗原提示機能の異常が病態形成に関与していることを示唆している。
BPS(膀胱痛症候群)
- 上皮剥離や粘膜の炎症所見はほとんどなし
- 特徴的な遺伝子発現プロファイルを示さない
遺伝学的背景
- HICの疾患感受性遺伝子領域がMHC領域内に存在
- HLA遺伝子領域(HLA-DQB1、HLA-DPB1)の遺伝子多型が関与
診断プロセス
基本方針
除外診断による背理的診断が基本
必要な検査
1. 尿検査: HICでは顕微鏡的血尿や軽度膿尿を認めることがある
2. 排尿記録: 排尿パターンの評価
3. 膀胱鏡検査: 必須検査、ハンナ病変の検出と悪性腫瘍の除外
4. 病理組織学的診断:
- HIC:尿路上皮の剝離と粘膜下のリンパ球形質細胞浸潤
- BPS:炎症所見を呈さない
重要な除外疾患
膀胱癌(特に上皮内癌)、前立腺癌などの悪性腫瘍が最も重要
GE Wennevikらのシステマティックレビューでは、拡張後の点状出血や、五月雨状出血の存在はIC/BPSの診断や症状重症度と一貫した相関を示さず、健常または他の泌尿器疾患患者にも観察されたため、診断マーカーとしてのエビデンスは確立されないと結論付けられた。
治療戦略
基本方針
病型分類を明確にし、個々の病型に対して別個の治療戦略を立てることが重要
◆HIC治療戦略
免疫性炎症が本態であるため、免疫調節療法を中心とした治療
◆BPS治療戦略
神経生理学的変調状態に対して神経調節療法(neuromodulation)を中心とした治療
薬物療法
◆1. 三環系抗うつ薬(Amitriptyline)
- BPSに対する第一選択薬
- 神経調節療法として作用
◆2. ステロイド
- HICに適応
- 低用量経口ステロイド治療の効果が報告されている
膀胱内注入療法
◆ジメチルスルホキシド(DMSO)
- 2021年にわが国唯一のHIC治療薬として承認
- 治療プロトコル:
- 2週間ごとに計6回
- 1~4%キシロカイン液注入後、DMSOを膀胱内注入
- 奏功率70%、重大な副作用なし、奏功期間6ヶ月
- HICでは経尿道的手術とともに第一選択
外科的治療
◆ハンナ型間質性膀胱炎手術(経尿道)
- 2022年に新規保険収載
- ハンナ病変部の切除/焼灼術と膀胱水圧拡張術を同時施行
- HICで最も症状改善が期待できる治療法
- 注意点:根治的ではなく複数回手術が必要、膀胱容量減少のリスクあり
多職種連携と将来展望
多職種連携
- BPS: 麻酔科・ペインクリニック、心療内科との連携
- 骨盤底筋緊張関連:ウロギネコロジー専門医、理学療法士との連携
膀胱水圧拡張術は、膀胱中心型のBPSの一部で効果がある可能性。
将来展望
- ゲノム解析技術と臨床病理学的解析の統合
- HLAバリアントの機能解析による病態解明
- 新規診断方法、疾患バイオマーカー、新規治療の開発加速
2025 ESSIC ミラノ国際会議で新しいガイドラインが策定されると予想される。
開業医向けTake Home Message
1. IC/BPSを疑ったら膀胱鏡検査を行い、ハンナ病変を見逃さない
2. 間質性膀胱炎に対してはまずDMSO膀注療法を実施
3. 診断に迷う場合や症状が非常に強い場合は、間質性膀胱炎手術と病理診断を依頼
4. BPSに対してはペインクリニック・心療内科と連携し、集学的治療を考慮
結論
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群は症状症候群であり、ハンナ型間質性膀胱炎と膀胱痛症候群は全く異なる疾患です。その正確な峻別は治療の成否を大きく左右するため、適切な病型分類に基づく治療戦略により症状の改善が期待できます。