骨盤臓器脱=性器脱(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤・腟断端脱)
Pelvic Organ Prolapse = POP
骨盤内にある臓器は、骨盤底と呼ばれる筋膜やじん帯などによって支えられています。これらが緩むことで腟[ちつ]から体の外に臓器が出てくるのが「骨盤臓器脱」です。中高年の女性に非常に多く、出産経験のある方なら、誰にでも起こる可能性があります。
骨盤臓器脱の初期には、入浴中などに股の間にピンポン球のようなものが触れるようになります。進行すると、夕方から夜にかけて、歩いているときに股の辺りに何かが下がっている違和感があります。
【 正常な女性骨盤臓器位置 】

骨盤臓器脱には、子宮を支えるじん帯が緩むことでおこる子宮脱。子宮筋腫などで、子宮を切除した場合に腟壁が出てくる腟断端脱。腟の前側にある筋膜が緩むことで起こる膀胱瘤[りゅう]。そして、腟の後ろ側にある筋膜が緩むことで起こる直腸瘤など、様々な種類があり、これらは、合併して起こることも多くあります。
治療は、原則、手術になりますが、初期の方や持病があって手術を受けられない方には、生活の見直しや骨盤底筋体操、装具療法などが有効です。
- 骨盤臓器脱の手術
- 子宮摘出+腟壁形成術など、従来から行われてきた手術法は、腟を通して子宮を摘出し、膀胱と腟、または、直腸と腟を支える筋膜・じん帯を補強する手術です。一般的に20~30%の確率で再発すると言われています。
経腟メッシュ手術【TVM 手術】は、腟壁と膀胱の間にメッシュを挿入して臓器を支えます。子宮を摘出しない利点がありますが、腟が固くなるので性交渉のある方や妊娠を希望される方にはお勧めできません。また、手術後の痛みや腟壁からメッシュが露出するなどの合併症があり、現在は、治療効果が高いと考えられるぼうこう瘤などが対象になっています。
腹腔鏡下仙骨腟固定術【LSC手術】は、おなかに数か所の孔[あな]を開け、腹腔鏡や手術器具を入れて、子宮の上半分を切除します。残った子宮と膣壁の前後にメッシュを縫い付けて引き上げ、骨盤の一部である仙骨に固定します。
体への負担が少なく、傷が目立ちにくい上に、TVM手術より効果が確実な手術で、H26年4月から健康保険で受けられるようになりました。しかし、最新の手術ということもあり、実施している医療機関はまだ限られています。当院ではLSC手術・TVM手術を多く手がけて成果を上げている名鉄病院ウロギネセンター長 成島雅博先生など、関連施設にご紹介しています。経過は極めて良好で、再発率も極めて低率です。入院期間は7日間程度です。